Henry Darger

ちょっと絵のうまい子供程度の画力。テーマは「ヴィヴィアンガールズ」という女の子たち率いる子供軍と、悪い大人たちの戦争。しかし、勧善懲悪めいた世界観の割には子供たちの拷問シーンが延々と描かれ、また主役であるヴィヴィアン・ガールズは実は女装した男の子である。蝶が飛び、花が咲くのどかな田園風景を舞台にした大人と子供の戦争は、一見ほほえましいが、稚拙に描かれた陰惨な細部は正視に耐えない。
100枚ほどのダーガーの絵は、1万5000ページを超える物語の挿絵として描かれている。
早くに家族を亡くし、病院の下働きで生活をしながら、ダーガーはこの巨大な物語を一生かけて書き続けた。ダーガーが亡くなり、遺品整理のため・・というか恐らくごみ片付けのために部屋に人が入ってはじめて、部屋の中を埋め尽くす絵と、膨大なノートが発見された。

凡人なら、描き続けていれば、自分の画風に飽き、このやり方はやりつくしたと思うときが来るだろう。しかし、ダーガーの表現には、一生涯を通じてまったく磨きがかかっていない。変化がないといってもいい。自分の想念をただ描き移し続けるさまは、オリバーサックスの「火星の人類学者」にでてくる画家、フランコ・マニャーニを連想させる。フランコは、生まれ故郷のイタリア・ポンティトの思い出にさいなまれ、現在もポンティトの町を描き続けている。ダーガーにも知的障害があったとされるが、すでに故人である現在では状況証拠からの推測の域を出ない。

http://www.hammergallery.com/Artists/darger/Darger.htm
(※リンク先は、人によっては、グロかも)